「製造禁止後26年・大量保管PCB化学処理体制整う」

環境庁が施設指定厚生省も基準決定



〜朝日新聞1998/5/14夕刊〜

   1972年に製造禁止になり、処理されないまま保存されていた大量の有害化学物質、ポリ塩化ビフェニール(PCB)について、来月から保管している電力会社などを中心に化学処理を行える態勢が整う。環境庁は水質汚染防止法で、処理施設を新たに特定施設に指定した。6月から施行される。厚生省も政省令で化学処理の奉納や基準を決めるなどの、法的制度がそろったためだ。全国にはトランスコンデンサーが46万台、PCBを含む汚泥・砂利が6千トンなど、大量のPCBが保管されてきたが、保管中に紛失したり、垂れ流したりするなど、大きな問題になっていた。
 PCBやPCB汚染物を焼却したり、化学処理したりする施設、洗浄施設が水質汚濁防止法で特定施設に定められると、排水規制がされて、設置の際に許可が必要となる。また、廃棄物処理法の正省令では、従来の焼却に加え、化学処理が認められる。廃油に含まれるPCBは1キログラムあたり、0.5ミリグラム、廃酸、廃アルカリは同0.03ミリグラムなどの基準をクリアするまで処理することを求めている。
 PCBは科学的に安定し、絶縁性が高いためトランスコンデンサーなどに使われる電気絶縁油、感圧紙、機械油、可塑剤などに使われてきた。しかし、1968年に九州を中心にカネミ油症事件が発生、その生殖毒性を含む強い毒性から1972年に製造が中止、トランスコンデンサーなどを密閉して使われているもの以外は使用が中止となり、各事業所で保管が義務づけられてきた。
 これまでの酷なに生産量と輸入量を合わせると約6万トンに達し、どう処理するかが課題となっていた。1980年代には環境庁の実証試験を経て、兵庫県で焼却処理が行われたが、ほかの地域では健康形態に不安を持つ住民の反対にあい、処理ができないできた。また、保管中に業者が紛失したりする例が後を絶たなかった。
 環境庁は処理策などについて検討を進め、昨年の学者等による検討会の中間報告では、欧米で進んでいる化学処理の方法などを検討、一般市民の合意を取り付けながら処理を進めることを求めていた。
 態勢が整ったことで、電力会社、JR、NTTなど大手企業を中心に化学処理のプラントを設置、処理事業に着手することになる。
 同庁が処理協会や電力会社などに行った調査では、トランスコンデンサーは保管中が46万トン台、使用中が37万トン、PCBを含む汚泥・砂利などが同6千万トン、液状のPCBが同7百7十キロリットルなどとなっている。

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