〜沖縄タイムス1998/05/08朝刊第3面〜
■「環境ホルモン」市民の対応は不透明
環境庁が7日発表した環境ホルモン問題への「戦略計画」は欧米と比べ対応の遅れが指摘されてきた日本が国として初めてまとめた対策だが、個別の化学物質の評価などには踏み込んでおらず、市民がどのように対応するべきかは不透明なままだ。
列記された対応策は、汚染状況の調査や異常発生のメカニズム研究など基礎研究の部分が中心。排出抑制策の検討などは、研究結果が出て各物質について環境リスク評価を行った後、ということになる。
環境ホルモン問題の特徴は、プラスチックや農薬など日常生活のあらゆる場面で使われている多様な物質が対象になっていることにある。このため関係省庁も環境庁のほか、厚生、通産、農水、建設、文部、労働、科学技術の7省庁にまたがる。
環境庁はその調整役を担っているが、今回の戦略計画は同庁の所轄事項に限られており、国の総合的対策としては十分と言い難い内容だ。市民の健康、特に胎児や乳児への大きな影響が指摘されている問題だけに、関係省庁の横断的な対応と迅速な情報公開が求められている。
■どう減らすか言及もなし
環境庁の戦略計画に不満
「疑わしい化学物質をどう減らしていくかの言及がないのはおかしい」。環境ホルモン問題への研究が欧米に比べ遅れている日本で、環境庁が打ち出した戦略計画に、環境保護団体や一部の研究者はこんな批判を投げ掛ける。実態調査、技術開発と内容は盛りだくさんだが、「最終的に何を目指すのかが分からない」と指摘する。
グリーンピースジャパンで有害物質問題を担当する関根彩子さんは「先進国の中には、ホルモン作用が疑われる化学物質について、期限を設けて、生産・使用の中止を求めるなどの具体的対策を実施している国もある。『科学的知見が不十分』との理由で個別の物質を規制できないのであれば、この問題への認識としてお粗末すぎる」と手厳しい。
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