環境に優しいのはスチールかアルミか・・・。鉄鋼メーカーなどでつくる鋼材倶楽部が、スチール缶の利用拡大を図るキャンペーンを始めたことに対抗し、日本アルミニウム連盟が「アルミ缶のエネルギー消費はスチール缶より少ない」などと主張するパンフレットを作製した。素材の業界団体同士が「比較広告」で、激しいさや当てを演じるのは異例のこと。小型ペットボトルの急増で、飲料缶の需要に陰りが見え始めたことが背景にある。 アルミ連が作製したパンフレットは「かけがいのない地球をまもる アルミ缶のすすめ」と題し、リサイクルやエネルギー消費の点で、スチールとアルミを比較している。収集されたアルミ缶が再び缶に再生されるのに対し、スチール缶が品質の低い棒鋼などに利用されている状況を挙げ、リサイクル面での優位を説明。また、製造から再生までのエネルギー消費量では、現在最も多く使われているスチール缶に比べるとアルミ缶の方が35%も少ないとしている。 パンフレットは2000部印刷し、近く飲料缶メーカーなどに配布する。アルミ連がこうした比較資料を公表したのは、鋼材倶楽部が昨年末、「スチール缶の容器特性」と題した説明資料をまとめ、販売攻勢をかけ始めたからだ。 こちらも、リサイクルでの手間が少ないことなどを根拠にスチール缶の方が優れている、と環境面での利点を強調。 これまでアルミ缶が100%近くを占めていた缶ビールを中心に、需要を増やそうと躍起になっている。 これまで缶が中心だった清涼飲料などの分野では最近、小型ペットボトルの浸透が目立つ。1996年4月から販売された500ml入りの小型ペットボトルは、1997年は20億本を超え、今年は前年の2倍に増える見通しだ。 あおりを受けて、アルミ缶は1997年の需要本数で、対前年比1%の微増にとどまった。アルミ缶リサイクル協会の予想では、1998年はさらに需要は鈍る見通しだ。スチール缶の実績も大きな伸びは期待できない。飲料需要そのものが、景気後退で頭打ちになっている状況で、限られたパイを奪い合う競争が激しくなっている。 〜朝日新聞1998/05/05朝刊〜
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