「香川県・豊島の産業廃棄物再生利用処理実」

技術的には解決の見通し



 約50万トンといわれる香川県・豊島(てしま)の産業廃棄物を中間処理し、再生利用を図るための処理実験が4月上旬で終了した。今夏までに処理方式を選定する県の技術検討委員会(委員長・永田勝也早稲田大教授)は「目視段階だが、処理可能」との見解を示しており、シュレッダーダスト(自動車などの破砕クズ)や廃油などが土壌に混在した豊島の産廃にも、技術的には解決の見通しがつき始めたといえる。

 処理によって生じる副生成物の再生利用については、豊島を抱える香川県もリサイクル材の公共事業への利用法などの検討を開始したばかり。一般廃棄物でさえ「焼却灰に鉛などが含まれ、生活環境への不安が利用促進を阻害している」(厚生省)ため、再生利用は全国的にもまだ初期の段階にとどまっているのが現状だ。
 豊島の産廃を高温で溶かす溶融方式による中間処理実験には大手企業4社が参加し、2月から行われてきた。懸念されたダイオキシン発生について検討委員会は「各社の実績から対応は可能」と見ている。
 さらに、委員会が優先課題とする再生利用でも、産廃の焼却灰を原料とする「エコセメント」や、スラグと呼ばれる副生成物を石材にする「エコロック」の生成実験などを実践。永田委員長は「日本の技術は最先端。有意義な情報を得た」と実験の手応えを感じたようだ。
 豊島の産廃処理実験が進む一方で、副生成物を公共工事に本格的利用する自治体はほとんどなく、阿南市(徳島)や草加市(埼玉)など多くの自治体が最中処分場に埋め立てたり、一時保管しているのが実情。
 年間約5万トンのスラグを出し、用途開発の研究を進める東京都ですら、処分場の路面材などに使用している程度だ。茨木市(大阪)や東海市(愛知)などは資材原料として民間に売却しているとはいえ、取引業者は限られ、年間約12万トンのスラグのうち、市場に流通するのは約2割にとどまっているという。
こうした実態に厚生省は3月、一般廃棄物について公共工事でのスラグの利用促進を図るよう各都道府県に通達した。背景には最終処分場用地の不足という現実があり、再生利用が進まなければ廃棄物行政が行き詰まる恐れが出てくるわけだ。
 豊島で予想される副生成物の量は産廃約50万トンの半分程度。産廃は民間による処理が原則だが、住民との中間合意で処理責任は香川県が負うことになった。行政のミスが招いたといえる国内最大級の不法投棄事件は、再生利用の観点からも行政の取り組みに課題を突き付けている。

〜沖縄タイムス1998/05/02夕刊〜

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