銅などを回収する「再生用原料」として日本から中国に大量輸出された廃電線の一部が、施設の整っていない浙江省の農村部などで「野焼き」処分されていることが、現地を訪れた複数の関係者らの証言から明らかになった。廃電線は燃やすとダイオキシンが大量に発生するとして、27日からスイス・ジュネーブで始まる「有害廃棄物の越境移動尾夜簿その処分の規制に関するバーゼル条約」の技術作業部会(TWG)でも、輸出を規制するべき稼働かが協議の対象とされている。しかし、同条約を所管する通産省、環境庁とも「中国国内でも適正な再生が行われているはずだ」と、野焼きの実態を把握していなかった。 ポリ塩化ビニルやポリエチレンで被覆された廃電線は、老朽化による交換や工場の解体などで発生する。被覆電線回収業者45社からなる「電線リサイクル協議会」(東京都港区)の推計発生量は昨年で年間約30万トン。協議会の推計によると、輸出量は年間約7万2千トンで、中国向けが半分以上という。浙江省が特に多いほか、福建省、江蘇省、広東省などにも陸揚げされているという。 中国政府は1996年夏ごろから、廃電線など「再生用原料」として輸入される品目について、輸入業者ごとに国家環境保護局が施設を検査したうえでライセンスを与える許可制をとり、野焼きについても規制を強めているという。 しかし、今年3月中旬、再生事業を視察した関東地方の電線回収業者は、浙江省の農村地帯で、廃電線の野焼きを目撃したという。 それによると、畑の遊林地を利用した500平方メートルほどの敷地に、廃電線が1度に10〜20トンずつ運び込まれ、昼間は6〜7人が被覆の樹脂をはぐ作業をしていたが、細すぎたり鉄で被覆されたりしているものは仕分けられ、夜のうちに野焼きされたという。 バーゼル条約で輸出を規制する有害物質の範囲をより具体化させるため、条約加盟国の会議で、廃電線など様々な廃棄物を規制品目と対象外品目に分類し直す作業が進められている。 通産省環境指導課は「エジプトやタイで野焼きの事例があるとは聞いていたが、中国では、銅、塩ビともに適正に再生利用されており、野焼きはされていないと聞いている」としている。また、環境庁海洋環境・廃棄物対策室は「野焼きが行われているとしたら問題だと思うが、実態は把握していない」としている。 野焼きとダイオキシン 廃棄物を野焼きなどの低温で燃やすと、ダイオキシン類が発生する。金属を含む破壊くずや廃電線は、特にダイオキシン類が大量発生しやすいとされる。 〜朝日新聞1998/04/26朝刊〜
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