「容器から環境ホルモン−国立衛生研が分析」

ポリスチレン製のカップや皿

溶け出しを実験で確認


 カップめんの容器や食品トレーなどに使われるポリスチレン製の容器中に、生物のホルモンの動きを撹乱することが疑われている「内分泌撹乱化学物質」(環境ホルモン)が含まれ、容器から溶け出す恐れもあるとの分析結果を、国立医薬品食品衛生研究所の河村葉子食品添加物第3室長らが25日までにまとめた。
 検出されたのはいずれも、ポリスチレンの原料のスチレンが複数結合したスレンダイマーやスチレントリマーと呼ばれる物質。
 発泡スチロールなどのポリスチレン製の食品容器は広く使われているが、これらの物質の残留実態などはほとんど分かっておらず、実験で溶出を確認したのも初めて。今後新しい生体影響の調査などが必要になりそうだ。
 河村室長は、市販のポリスチレン製の食器やトレー、カップめんの容器など25種類について、含まれる物質を分析。すべてからスチレンダイマーやスチレントリマーを検出した。平均は1g当たり9,509マイグラクロム(1マイグラクロムは100万分の1グラム)、最高では同21,430マイグラクロムといずれもかなり高濃度だった。
 含有濃度が比較的高かった食品ケース、コップ、どんぶりの3種について脂肪分の多い食品への溶出を模擬して、有機溶媒中にどれだけスチレン化合物が溶け出すかを調べたところ、最高で製品1平方センチ当たり4.39マイグラクロムのスチレントリマーが溶け出していた。
 溶け出した量は、製造過程でゴムなどを加えた「対衝撃性ポリスチレン」が特に多かった。だが、60度の湯での溶出試験ではいずれの物質も検出されなかった。
 分析結果は、5月13日から東京で開かれる日本食品衛生学会で発表される。
 河村室長は「スチレンターイマーなどのホルモン撹乱物質としての詳細は明かではないが、これらの物質が直接食品と接触するよう忌中に存在することに注意を払う必要がある。容器中に含まれる物質がどの程度食品に移るかを調べたい」と話している。

ポリスチレン
有機化合物の一種のスチレン分子(モノマー)を複数結合(重合)させた物質でスチロール樹脂ともいう。衝撃には弱いが熱には強く、色が付けやすいなどの利点があり、食品容器などに広く使われている。ゴムを加えて衝撃に強くしたものや、発泡剤を加えた発泡スチロールなどがある。スチレンダイマーやスチレントリマーはホルモンの働きを撹乱する作用を持つとの報告があるが、これを否定する研究結果もある。
 学校給食に使われる食器では、ポリイカーボネート製品の中に食品衛生法の基準を上回る環境ホルモンが見つかり、回収騒ぎが起きた。

〜沖縄タイムス1998/04/25朝刊〜

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