高濃度のダイオキシンが大阪府能勢町のごみ焼却場「豊能郡美化センター」周辺の土壌などから検出された問題で、環境庁と厚生省は22日、大阪府や豊能郡環境施設組合の担当者を呼び、事情を聴いた。大阪府は庁内に対策会議をつくって原因究明に当たる報告し、土壌の回復措置のための財政的な支援を求めた。両省庁は府の動きを見守る方針で、排ガスで高い値を出した他の焼却施設周辺での土壌調査をする考えはないという。 ■及び腰 環境庁の会議室。冒頭、吉田誠宏・環境指導室長は「重大な事態だが、もう少し時間をいただきたい。国から技術的、財政的な支援をもらいたい」と切り出し、頭を下げた。埼玉県所沢市をはじめ土壌汚染が明るみに出ていることや、対策の基準値がないことなどから、環境庁は基準を作るための検討会を連休明けに発足させることを決めた。 同センターでは、厚生省の排ガス調査の祭、焼却炉メーカーの三井造船が ダイオキシン地が低くなるよう運転工作をしたことが明らかになっている。厚生省はこの日、施設組合の今中事務局長らから事情聴取し、通常と異なる運転をしたことを認めたため注意した。23日には三井造船からも事情を聴く。 が、肝心の排ガス濃度が高かった全国の他の焼却周辺の土壌調査については両省庁とも「いまのところ考えていない」と消極的。 昨年、ダイオキシンの基準を決めて対策が始まっているのと、調査して高濃度汚染が明らかになれば、昨年の排ガス調査自体の信頼性に傷が付きかねないとの危ぐもあるようだ。 ■能勢町と一緒は困る センターと同じ三井造船が造った「炉頂型」と呼ばれる焼却炉がセンター以外に5カ所。4カ所が、厚生省が緊急対策を求めた80ナノグラムを上回っていた。だが、これらの炉を管理する一部事務組合は、「能勢町と一緒にしてもらっては困る」と神経をとがらせる。 排ガス調査の操作については と全否定だ。 土壌調査をするかどうかについてはなどとしている。 ■ここだけか豊能郡環境施設組合が設置した「ダイオキシン対策検討委員会」(委員長=武田治生・京大大学院教授)は「1000pgを超える土壌は表土を入れ替えることが望まれる」と発表した。「能勢だけの固有の問題か」という報道陣の質問に「可能性はすべてである。しかし、すべての所でそうなっているとは思えない」と検討委の委員長・武田教授。本当はどうなのか。その回答も出そうにない。 〜朝日新聞1998/04/23朝刊〜
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