人の生殖機能への悪影響が指摘されている「内分泌撹乱化学物質」(環境ホルモン)など化学物質による環境汚染に予防的に対応するため通産省は20日までに、化学物質の大気や水、土壌への排出量などを国に報告するよう企業に義務付ける「環境汚染物質排出・移動登録制度」(PRTR)を法制化する方針を固めた。 経団連など産業界は「自主的な取り組みが現実的」と法制化に反対していたが、通産省は来年の通上国会にもPRTR法案の提出を目指している。環境庁も同様の法案作成を視野に入れており、化学物質行政をめぐる両省庁の権限争いが本格化しそうだ。 PRTRの骨格として通産省は
A選ばれた化学物質を一定以上扱う企業に対し、産業廃棄物として排出する際の移動量や環境への排出量を国に報告するよう義務付ける。 B排出量を国が集計し地域別に公表、将来的には事業所ごとに公表する。
これに対し、通産省は事業所ごとに公表するためには周到な準備期間を設けるなどと説明しており、経済界も受け入れに傾いているもようだ。 PRTRをめぐっては、経済協力開発機構(OECD)が1996年日本も含む加盟各国に導入を通告した。環境庁は神奈川県川崎市、同藤沢市周辺、愛知県豊田市周辺の3地区を選びPRTRを施行実施しており近く報告をまとめる。 日本科学工業協会が1992年度、経団連も1996年度から自主的にPRTRを導入しているが、まだ試行段階。排出量の公開も全国レベルにとどまっている。通産省、環境庁とも「協会に参加かしていない企業にも報告義務付けないと不公平で企業任せでは情報の信頼性に欠ける」などを法制化の理由に挙げている。 〜沖縄タイムス1998/04/20朝刊〜
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