この処分場は泉区の神明台処分地(約51ヘクタール)で、鶴見区の焼却場からの灰が持ち込まれる。処分地は住宅街に囲まれている。横浜市には、中区にも処分場があるが、ここは海面の埋め立て地になっている。 市は1996年7月と1997年1月に、住宅地との境界や埋め立て作業地点付近など計6地点(6検体)のダイオキシン濃度を測定した。その結果、3地点が環境庁基準値(1立方メートルあたり0.8ピコグラム=1ピコは1兆分の1)を超えていた。最初の調査では住宅地との境界で1ピコグラム、作業場で2ピコグラムを記録、2回目の調査でも処分場の端で2.4ピコグラムの濃度を記録した。6地点の平均値は1.12ピコグラムだった。 環境庁は昨年、大気中の基準値と、焼却炉排出口のガスの規制値を決めたが、最終処分場については、灰が飛散しなければ問題ないとして、大気中のダイオキシンの規制値はない。 この処分場は、計画人口1万8000人の新興住宅地「緑園都市」に隣接し、73年から埋め立てが始まり、2007年までに約660万トンの焼却灰が埋められる予定。これまでに6割が埋め立てられた。住民らは1996年12月、「30年も処分が続くのは受忍限度を超えている」として横浜市長を相手取った公害調停を神奈川県公害審査会に申し立てている。 市側は「今後の埋め立て計画の資料にするため」として調査。21日の調停の審理で住民側に示される。横浜市側は「必ずしも作業地点の風下で高い値となっているわけではなく、埋め立ての影響はないのではないか」としている。 ●実態調査、急ぐ必要──愛媛大学の脇本忠明教授(環境計測学)の話 ダイオキシン対策には、発生源の規制とともに、排出された灰がどんな状態にあるかを知る必要がある。灰を埋めた処分場から検出されるのはわかっていながら、結果がこわくて、調査が進まなかったと思われる。もっと汚染度が高い処分場もあるはずで、全国の自治体は、実態調査を急ぐべきだ。 〜朝日新聞1998/04/18朝刊〜
|