「一変した国の見解」

危険性


 これまで何の規制もなかったダイオキシン類について、国の見解が昨年から今年にかけて一変したことも、地方の戸惑いに拍車をかける。
 国内で、焼却灰から初めてダイオキシン類が検出されたのは八三年だ。厚生省の専門家会議は翌年、焼却場周辺の住民ダイオキシン類摂取量について、「安全率は高い」と報告していた。しかし、欧州では八〇年代半ばから九〇年代前半にかけ、次々に一日の耐用摂取量を設けた。今年二月には、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(JARC)がダイオキシン類の発がん性を認めた。
 WHOの動きを事前に察知した厚生省は「ダイオキシン類は毒性が強い。焼却場の周辺住民はその影響を受ける恐れがある。排出削減は緊急の課題」と、全国の焼却場のダイオキシン類濃度を公表した。
−中略−

 地方の焼却場が整備されるには、まだ相当の年月がかかりそうだ。その間、厚生省が手をこまぬいて見ていることは許されない。ダイオキシン類対策は、焼却方法の改善だけでは解決につながらないからだ。
 日本は世界で最もごみ焼却量が多いといわれている。日本と比べてごみの発生量がやや少ないドイツではリサイクルの徹底などで、日本の三分の一以下の焼却量で済んでいる事実を重く受け止めるべきだろう。
 さらに発生源を断つ努力も欠かせない。塩化ビニールや塩素系の塗料、漂白剤など、ダイオキシン類生成につながる製品は相変わらずはんらんしている。そうしたメーカーの規制に、厚生省は今のような及び腰を続けてはならないと思う。

〜朝日新聞1997/12/14朝刊より〜

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