「環境ホルモン汚染を警告する−『奪われし未来』の著者の一人」

ダイアン・ダマノスキさん


「私たちは、発ガン作用だけに注目し、化学物質の有害性を考えているうちに重要な問題を見逃していました」
 化学物質の中に、本物のホルモンのように作用して生殖や免疫などの機能を狂わすものがあることは、専門家の文献ではかなり前から触れられていたという。
 ふ化しないワニやカモメの卵、アザラシやイルカの大量死、人のせい指数の減少・・・。野生生物のみならず、人の健康にも悪影響を及ぼすと指摘されている「内分泌撹乱化学物質」(環境ホルモン)は、今や環境問題の一大テーマ。米国でベストセラーになった「奪われし未来」(翔泳社)の著者の一人として、そのきっかけをつくった。
 東京や大阪での講演のため3月下旬に来日、自民党環境ホルモン小委員会のメンバーとも意見を交わした。
 全米で2000万人が参加した1970年のアースデー(地球の日)を担当してから、テレビ・新聞・週刊誌とさまざまなメディアでジャーナリストして環境問題を迫った。研究の動向、保護運動から政治の動きまで目を離さず、1996年にフリーとなってからは大学の都市・環境政策学部で講義もしている。
 「行政は、個々の物質にどの程度されされれば人体に悪いのかだけに目を向け、幾つかの物質が複合して作用すると相乗効果を生むことなどは考慮していない。フィクションの世界に生きているようなものです」。昨年末から始まった日本のダイオキシン規制も、ホルモン作用からは不十分と指摘する。
 環境ホルモンでもっとも懸念されるのは、子供や胎児への被害。 「何万種類もの化学物質のうち、体内で接触した際の胎児への影響を適切にテストしたものはない。私たちは地球という化学物質実験場のモルモットです」
 生まれた米マサチューセッツ州に暮らす。53歳

〜沖縄タイムス1998/04/07朝刊〜

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