「土壌のダイオキシン汚染−欧州で環境基準設定」

実態調査、日本でも急務


 昨年12月の大気汚染防止法、廃棄物処理法の改正で、猛毒の化学物質ダイオキシン問題の最優先課題だった、ごみ焼却対策が本格的に動き出した。今後の焦点の一つは、既に環境中に放出されたダイオキシンによる土壌汚染だ。欧州などには、環境基準を設定し規制を強める国もあり、日本でも実態調査が急務になっている。

土から直接摂取
焼却施設や野焼きで出たダイオキシン類は、大気中の粒子などに付着して土壌に降下する。人間が体内に取り込むダイオキシンのうち、土を口に入れたり吸い込むなどして直接摂取するのは0.1〜1.4%で、9割以上を占める食物経由に比べれば小さい。だが、大気汚染度が高い日本では見過ごせない。
 ダイオキシン汚染が問題となった埼玉県所沢市の一地区で、宮田秀明・摂南大教授(環境科学)は、2〜6歳の子供と成人が土壌経由でどのくらいのダイオキシンを摂取するかを推定。3月上旬の日本環境化学会で発表した。
 この地区の汚染度は、最も毒性の強い2・3・7・8四塩化ダイオキシンに換算した濃度で土壌1g当たり448ppg〜65ppg。
 子供は年に40回土に触る遊びをし、口や皮膚からダイオキシンを吸収すると仮定すると、448ppgの地点では1日平均11ppgを摂取することになり、厚生省の定めた1日摂取量10ppgを超えてしまう。
 宮田教授は「食事でダイオキシンをかなり取り込むのに加わるのだから、土と触れ合う機会の多い子供にとっては安全とは言えない」と話す。
 一方、成人の場合は問題になるレベルに達しないと言う。

農薬も汚染原因
脇本忠明・愛媛大教授(環境計測学)は、現在は使用が禁止されたが、除草剤として国内で広く散布されていたペンタクロロフェノール(PCP)やクロニトロフェン(CNP)に不純物として混じっていたダイオキシンによる汚染を指摘する。
 松山平野での土壌調査で、公園、森林などに比べ、水田の汚染度はけた違いに高い地点があった。水田の土壌と、平野を流れる河川や沿岸海域の底の泥のダイオキシン類組成が似ており、かんがいする際に水田から流れ出したモノが広範囲汚染の原因の一つと考えられる。
 現在は残留農薬に加え、大気からのダイオキシンの割合が増えているという。

間に合う対策
諸外国の土壌環境基準を見ると、ドイツで児童の利用する学校や幼稚園、児童遊園などの運動場は土壌1g当たり10ppgの汚染で土壌の入れ替えを奨励。
 農地は検討中の国を含め、5〜40ppgとしている国が多い。  土壌汚染は長期間持続するが、水田などを除けばダイオキシンの移動や拡散もごくわずか。作物への吸収もほとんどない。脇本教授は「幸か不幸か、対策は今なら間に合う状況だろう」と話している。

〜沖縄タイムス1998/03/24朝刊〜

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