産廃中間処理施設の建設
安全立証「業者に責任」













 山梨県若草町に民間業者が建設中だった産業廃棄物中間処理施設について、住民約2,350人が建設差し止めの仮処分申請をしたのに対し、甲府地裁(生田瑞穂裁判長)は25日、住民側の申し立てを認める決定をした。業者側には、環境汚染防止対策の効果についての立証が必要だとし、今回のケースでは、それが不十分だと判断した。現行の規定では、廃棄物処理施設が住民生活に及ぼす影響までは配慮されておらず、行政側の対応も見直しを迫られそうだ。
 決定の中で生田裁判長は、焼却処理が予定される施設では猛毒のダイオキシンが発生する可能性があり、運営する業者には「環境汚染の防止策についての具体的な資料を提出し、住民の健康を侵害するおそれのないことを明らかにしない限り、住民の健康が害される恐れがある」として、業者側の安全立証を求めた。
 問題となった施設では、排煙からダイオキシン類を除去する装置が設置される予定だった。しかし、「具体的な性能や数値計算の根拠を明らかにしていない」などとして、立証は不十分と判断し、住民の言い分を全面的に認めた。
 また、施設が操業されれば、ダイオキシン類による住民の健康被害は広範で深刻な可能性があるなどとし、「こうした被害を営業の自由や廃棄物処理の社会的必要性の名のもとに受忍すべきとは言えない」とした。
 仮処分を申請した住民代表の一瀬明さん(46)は「施設の必要性より、住民の命と住環境を守ることが一番大切であることが認められた」と決定を評価している。
 建設差し止めの仮処分が出た施設は昨年11月、若草町の飛び地に県内の業者が建設を開始。約6,200平方メートルの敷地に、木くずや廃油の焼却、建設廃材の破砕、汚泥の乾燥などの施設をつくる予定だった。これに対し、隣接する田富町の住民は「水源や大気の汚染で健康を害されるおそれが強い」と反発し、着工直後に仮処分を求めていた。

住民への影響、基準作り迫る
 現行の廃棄物処理法では、廃棄物の処分場や処理施設の建設については、法律が定める設置基準などに適合していれば、都道府県知事は許可しなければならない。増え続ける廃棄物の処理を優先させることに主眼を置き、処理施設が住民生活に及ぼす影響は、基本的に配慮されていない。
 水戸市に民間業者が計画した産廃処分場(安定型)の建設を、茨城県が「地下水汚染の恐れがある」として不許可としたことに対して厚生省は昨年末、「法律が定める要件に適合していれば、必ず許可しなければならない」と、県の処分を取り消す裁決をした。
 甲府地裁の仮処分決定は、こうしたルールに新たな基準を設けることの必要性を迫ったものと受け取れる。山梨県環境局は「県は国の指導に基づき、業者に指導してきた。(仮処分申請の審尋の中で)業者がどれだけ説明したのか分からないが、廃棄物行政を進める上で大変厳しい判断と受け止めている」としている。

〜朝日新聞1998/02/26朝刊〜


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