ゴミ減量に効果あるはずが… | |
| 環 境 庁 モ デ ル 事 業 中 止 | |
重くて割れるガラス瓶に代わって、ごみ減量につながると期待されたプラスチック容器による「再使用モデル事業」が、環境ホルモン物質のために中止された。軽くて強いプラスチック容器はガラス瓶の欠点を補うが、お湯などを繰り返し入れると生殖障害の原因とされる環境ホルモン物質が溶け出すことが分かったためだ。モデル事業を進めてきた環境庁は、ごみ問題解決の難しさに頭を痛めている。 ビール瓶のように再使用される容器は、缶などに押されて年々減っている。スーパーやコンビニエンスストアが増えたこともあって、配達・回収機能が低下して流通コストが上昇し、消費者も重くて割れるガラス瓶を敬遠するようになったためだ。 オランダやデンマークなど欧州数カ国は、ガラス瓶に代わる再使用容器として、プラスチックのひとつであるポリカーボネート容器を導入している。 環境庁の検討会も1996年、ごみ減量のためにプラスチック容器の導入と規格の統一化などのモデル事業を実施するよう提言した。早ければメーカーや販売店の協力を得て、今年中の商品化を目指していた。 このため、環境庁はドイツから1本100円のポリカーボネート容器2000本を輸入し、民間の研究機関に依頼して安全性の試験などを続けてきた。 ところが、熱湯、油、アルコール、酢を入れて容器の成分が溶け出さないかどうかを調べる試験で、ポリカーボネートの原料で環境ホルモン物質とされるビスフェノールAが溶けだしていることが分かった。最初は試験に使った8本のうち1本からしか検出されなかったが、50回、100回と洗浄を繰り返すうちに8本すべてから検出されるようになった。 溶出の濃度は最大で0.18ppm(1ppmは100万分の1)なので、2.5ppm以下と定められている食品衛生法上は問題がなかった。しかし、環境ホルモン物質は1兆分の1の濃度レベルでも生殖機能に悪影響を与えるとみられている。 1998年度から環境ホルモンの生態系やヒトへの影響調査を本格化させる環境庁は、環境ホルモン物質が溶け出すプラスチック容器の再使用事業を断念せざるを得なくなった。 環境庁の伊藤哲夫・環境保全活動推進室長は「環境ホルモンについては情報が少ないため、引き続き調査研究を続けていく」と話している。 環境ホルモン:内分泌かく乱化学物質のことで、体内に取り込むと女性ホルモンと同じような働きをする。野生生物にはワニのペニスが小さくなるなど生殖機能障害が出ているといわれ、人間にも子宮内膜症や精子の減少などとの関連が指摘されている。ダイオキシンやポリ塩化ビフェニール(PCB)など約70種がリストアップされている。 〜朝日新聞1998/02/24朝刊〜
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