日米公害摩擦!? 米軍厚木基地に隣接する民間産業廃棄物処理施設の排煙にダイオキシンなど の有害物質が含まれている疑いが濃いとして、米海軍は十二月から、赤外線レ ーザー装置で、この処理施設を二十四時間態勢で監視することを決めた。在日 米海軍司令部(横須賀)のハスキンス司令官が二十日、厚木基地を訪れ、米海 軍や家族にこうした「公害対策」を説明した。軍用機の離着陸などによる騒音 公害の発生源として市民団体に監視されている厚木基地が、逆にフェンスの外 を監視するという事態になった。 民間産廃物処理施設は基地の南側に隣接し、基地内の住宅地域から二百五十 メートルほどのところにある。米軍は有害物質が出ているかどうか、風向きに かかわらず調査、分析できる特殊な赤外線レーザー装置を本国から導入して、 監視を開始する。煙突の排出口にレーザーを当てると、化学物質の種類と量が 測定できるという。 この処理施設をめぐっては、廃棄物を焼却する際の排煙に有害物質が含まれ ているとして一九八九年、米軍が神奈川県に改善指導を求めた。ぜんそく患者 が横須賀基地に比べて厚木基地に多いなど「被害が出ている」という訴えだ った。 その後、日米合同委員会の環境分科委員会で対策が話し合われ、九二年に日 本側は「大気汚染防止法の範囲内」としてこの協議の終了を提案したが、米側 は継続を求めた。 今春、この処理業者が、焼却炉の二十四時間運転化で、処理量を現在の三倍にする申請を県に出した際、米海軍は地元の工業団地とともに強く反対し、改善を求める要望書を出した。 米軍は独自に汚染調査をし、九五年にはその結果をまとめて環境庁に改善を求めた。調査によると、基地内の二カ所で集めた大気サンプルからダイオキシンや四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの有害物質が検出された。米軍はその後も基地内四カ所で調査を続けているが、今夏の調査でも状況が改善されていなかったという。 レーザー装置による監視に踏み切った理由について、米軍側は@サンプリング調査では風向きによってデータが変化するA基地に向かって風が吹いている時は焼却量を減らすなどの自己規制を業者側がしており正確な調査ができないため−と説明している。 ハンスキンス司令官は、「産廃施設は日本の民間企業だから、日本政府に解決してもらうしかないが、健康公害が許容範囲以下になるまで、調査を続けたい」と話している。 〜朝日新聞1997/11/21夕刊〜
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