〜〜横浜国大調査、年排出量の半分相当〜〜 東京湾の海底に堆積(たいせき)している発がん性物質ダイオキシンは、全国で1年間に排出される総量の約半分(毒性換算)にのぼることが、横浜国立大の益永茂樹教授(環境化学)らの研究でわかった。現在、日本人が人体に取り込むダイオキシンの多くは魚によることから、ごみ焼却炉改善による摂取量減少の効果が出るまでには、かなりの時間がかかりそうだ。 益永教授らは、 200種類以上あるダイオキシンについて、東京湾内7カ所で海底の泥を分析。その結果、ダイオキシンが主に排出された過去35年間で、湾全体には、最も毒性の強い種類に換算して約2,200gのダイオキシンが蓄積していることが判明。 内訳は大気からが約45%、農薬からが約31%、残りは不明。 1970年代初めまで大量に使われていた農薬の一部には、不純物としてダイオキシンが含まれ、川を通じて湾に流入したらしい。 現在は、毒性換算で排出の95%以上がごみ焼却場の排ガスによる。湾の流域には現在、年間約100gが降下しているとみられる。 摂南大の研究では平均的な日本人は175pg/日(ピコは1兆分の1)程度のダイオキシンを摂取し、その約6割が魚の汚染が原因で、直接吸入と野菜からの摂取は12%と推定している。 横浜国大の中西準子教授(環境リスク論)は関東地方のある焼却場で調査し、付近住民の1日摂取量を最高で日本人平均の1.36倍と推定。やはり魚からが44%と最大で、吸入と野菜は35%だった。 中西教授は「発がんリスクは、環境中にあるほかの発がん性物質と比べ、けた違いに大きくはないが、削減すべきレベルだ」と話す。 〜朝日新聞1998/02/03朝刊〜
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