「どんど焼き『分別』で守ろう」


 府中市では「昭和」の初期まで、地域ごとに畑などでどんど焼きをしていた。戦争で途絶えたが、1985年に復活。今は毎年1月15日朝、市内4つの文化センターで実施している。7000人余りの市民が参加、正月行事として定着している。
 ところが、野焼きで発がん性物質のダイオキシンが発生するなどして、去年から、埼玉県や秋田県の自治会などで、どんど焼きを中止する動きがあった。
 そこで府中でも去年11月、自治会などでつくる「コミュニティ協議会」や青年会で検討した。だが、「親しまれている行事を存続させてほしい」との意見が多く、発生原因となる物をなるべく取り除いて続けることに。回覧板やビラで金物類、お札や正月飾りのビニール類などを取り外し持ってくるよう連絡した。
10日午前、「セイノカミ」と呼ばれるどんど焼きがあったのが豊島区。区立要町第一児童館の中庭で地域の人達が炎を囲んだが、ここでも、あらかじめ「プラスチックなど燃えにくいものは外して下さい」と呼びかけるチラシやポスターを配った。
 さらに当日は、住民らが持ち寄った正月飾りを燃やす前に、児童館の職員がプラスチック類や針金などが混じっていないかチェックして取り外し、ダイオキシン対策に気を配った。
 この催しは92年に復活し、再び地域にも親しまれつつあるだけに、「伝統行事として続けるためにも、ダイオキシンや煙が出ないよう配慮したい」と担当者はいう。
 武蔵野市は、市児童女性課が開催する約10カ所の責任者らに「分別」を依頼した。地域ごとにポスターで呼び掛けたり、会場で取り外したりするという。田無市立西原二小でどんど焼きをしている「樹林の会」は、初回の去年からすでに分別を実施している。
 とくに呼び掛けなどしていない自治体もあるが、都環境保全局は「伝統的な行事でもあり、各自の判断にお任せしたい」と、指導などはしていないという。
 加藤孝一・府中市文化センター課長は「厳密にいえば、たき火でもダイオキシンは出る。どんど焼きは子供たちが多く参加する地域活動なので、なるべく害が出ない形で続けたい。日常の行事をきっかけに、分別への常識が高まってほしい」と話す。

〜朝日新聞1998/01/11朝刊より〜

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