「環境先進国を訪ねる/ドイツ−ゼロエミッション社会目指して」



〜琉球新報1998/10/06夕刊〜

 ドイツのスーパーに入ってビックリするのは、容器に過剰包装がないことである。買う人もスーパーの一角にある箱に商品を裸にして余分なものをはがして投入する。卵を買う時も古紙の卵パックを持参するし、肉も古紙のトレーに入っている。さらに、買い物袋を全員が持参していることだ。

 省資源や省エネに生活者自身が取り組んでいる豊かな国であり、それにプラスチック類が少ない。ペットボトルは全くお目にかからないし、アルミ缶やスチール缶も少ない。ジュース類、水は同一容器の使用でデポジット制になっていて、沖縄のようにポイ捨てをすれば倍以上の金額を払ったことになってしまう。紙はガムの包装紙まで再利用資源ごみの箱に入る。生ごみはすべてたい肥にされる。しかも十分水気を切って出される。たい肥は学校、公園、家庭、ブドウ畑に無料で配布される。なんと賢い国民であろうか。資源がなく生活品の大部分を輸入物資に依存しているわれわれは、他国の資源をせっせとごみに変え、焼却炉に送っている。しかも猛毒のダイオキシンを製造し、海に流し汚染された魚介類を食卓に上らせている。

「黒い森」のホイデンシュタット市では、ごみ分別が30種以上もあるのに感心した。例えば、ガラスの場合「一般ガラス」「アルミサッシ」「防音ガラス」「車のフロントガラス」「鏡」に分別される。さらに危険ごみはもっと細かく分別され無害化処理される。

埋め立て地のごみも管理が厳重で、プラスチック類による環境ホルモンに注意し、安全に処理できるようになった時もう一度掘り返すとのことには頭を垂れるのみである。ドイツも埋め立て地の確保が困難で、2005年からは焼却が導入されることになっているが、ガス化溶融炉によるスラグ化でセメント建材、道路舗装材等に利用する方向にある。ドイツ、スウェーデンでは、原則として「ごみは出さない」「ごみになるのは使わない」としている。どうしても焼却しなければならないごみは電気と蒸気に変える方式をとっている。埋め立てはリサイクルや再利用できないごみだけでメタンガスを採取し、電気に変えている。

 環境教育もスウェーデン同様、保育園から高校まで行われ、市民団体や企業に対してもNGO団体が国、郡、市のバックアップで官民一体となって行われている。閉鎖的な日本の行政はやはり窓をNGOに大きく開ける必要があろう。商工会議所でも企業や労働者への積極的な環境教育とエコビジネスへの転換企画に乗り出している。

さて、私たちにドイツ方式は無理なのかなー。資源を無駄にしダイオキシンの中で生活するか、いずれか、今選択する時であろう。
(環境カウンセラー・渡久地澄子)

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