〜琉球新報1998/07/16朝刊〜
プラスチックを製品に加工する前の小さな粒子・レジンペレットが沖縄県内をはじめ、全国の海浜に漂着し、環境を広範囲に汚染していることが国立医薬品食品衛生研究所などの調査で確認された。
漂着したペレットには、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)も含み溶け出す心配もされる―となると、防止対策、漂着物の撤去など、しっかりした対策が必要なのは言うまでもない。発生源が国内とは限らず、国境を越えたところから流れ着くのもあるとなると、国内だけでなく、地球的規模での対策、とりわけ、アジア太平洋地域の国々との協力体制づくりが求められる。
同研究所のホームページ「海洋汚染物質としてのプラスチック粒の監視網」によると、漂着ペレットの起源は、
@プラスチック工場から不良品や散乱したペレットをごみとして廃棄物処理業者に引き渡されたり、排水口などから漏れ出したものが海に流れ出た
Aごみとして海に投棄された
B船への積み降ろし中に、何らかの原因で海に落ちた
などのケースが考えられるとしている。
漂着物として発見されたペレットが、どこから漏れ出し、またはどこで投棄されたのか分からないことも問題だ。国内で防止対策を強化しても、国境を越えて流れ着いてくるのだから厄介だ。逆に日本から流れ出たものが、他国に流れ着き、迷惑をかけているのもあることだろう。
国内では日本プラスチック工業連盟、石油化学工業協会などが、「樹脂ペレット漏出防止マニュアル」を五年前に作成し、傘下の各社に注意を喚起している。
企業として、ペレットの製造から製品となり、廃棄処理に至るプラスチックの全生涯を通して、環境保全に常に努力を払うのは基本的責務。環境と産業の調和がなければ企業そのものも存在できない。
ペレットの大きさは2mmから6mmと、小さく、注意して見なければ、見つけることはできないが、海鳥、魚類がえさと見誤って食べ、死亡したとの研究報告がある。食べてしまったペレットが消化、排せつされずに、満腹感を引き起こし、栄養不良になって死ぬといわれる。
溶け出す恐れがあるといわれる環境ホルモンについては、まだはっきりしないところもあるが、野生生物だけでなく、私たち人間の生存にもかかわる大きな問題だけに、懸念されることは一つ一つ、取り除いていかねばならない。
特に、沖縄は海に囲まれた島々からなり、離島にも廃油ボールが流れ着くなどの被害があるだけに、漂着ペレットには無関心ではおれない。まずは、徹底的な調査をし、どの程度漂着ペレットに汚染されているのかの確認をぜひやってほしい。また、どこから流れ着いた可能性があるのかの追跡調査。そして、万全な防止対策。小さいものだけに取り除くのは大変だろうが、その態勢を早急に確立してほしい。
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