〜琉球新報1998/07/14夕刊〜
盛岡大短期大学部(岩手県滝沢村)の小島文博講師(有機電気化学)らは14日までに、ごみの焼却炉で発生するダイオキシン類を電気分解する実験に成功したことを明らかにした。
ダイオキシンは分解されにくく、高温での燃焼や触媒、微生物の利用などが研究されているが、いずれも設備が大掛かりで費用や時間がかかるなどの問題がある。電気分解だと、短時間に低コストでの処理が期待できるという。
小島講師は「仕組みが簡単で、低い電圧で処理できるため、焼却場から家庭用焼却炉まで規模に関係なく、幅広く応用できるのではないか」と話している。
同講師らによると、実験では、アセトニトリルと呼ばれる溶媒5ミリリットルにダイオキシン420マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)を溶かし、溶液に電極を入れて、数ボルトの電圧で電気を流した。その結果、約30分で溶液中のダイオキシンが検出されなくなった。
分子構造のうちベンゼン核と呼ばれる強固な部分が分解されてカルボン酸など多種類の化学物質が生成され、ダイオキシンの特徴である塩素は電気分解後、溶液中の塩素化合物や塩素イオンの形になったとみられる。生成物の毒性は比較的低く、電気分解を続ければ無害化できる見通しという。最も毒性が強いとされる2・3・7・8四塩化ダイオキシンなど計8種類のダイオキシン類で、同様の結果が得られた。
共同で研究をしている環境関連製品の製造販売会社PBM(仙台市青葉区)が、焼却場の排ガスや焼却灰を溶媒に溶かして電気分解する方法で実用化に取り組んでいる。
新しく面白い発想だ・脇本忠明愛媛大教授(環境計測学)の話
ダイオキシン類を電気で分解するという発想は新しく、面白い。ダイオキシンを破壊する方法はいろいろあるが実用化が難しい。焼却場などに早く普及させるためには、なるべく電気や熱のエネルギーを使わず、コストがかからない方法を実用化することが重要で、電気分解は期待が持てそうだ。分解による生成物が、実用段階で本当に無害かどうかを見極めることが今後の課題と思う。
※沖縄タイムス1998/07/14夕刊・総合に同記事が掲載されていました。
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