〜琉球新報1998/07/08朝刊〜
母乳に含まれる猛毒物質ダイオキシンをめぐり母親の間に不安が広がっている。厚生省は「現在のところ乳児に与える影響は少ない」として授乳を勧めているが、安全性については専門家の間でも明確な結論は出ていないのが実情で、独自に健康調査を計画する助産婦も現れた。
アトピー性皮膚炎について電話相談を受けている「アトピッ子地球の子ネットワーク」(東京都港区)には、昨年秋ごろから母乳中のダイオキシンについての問い合わせが目立つようになった。
赤城智美事務局長は「電話口で『これから赤ちゃんをどうやって育てていけばいいのか』と泣き出す人もいる」と話す。
厚生省が埼玉や石川など4都府県で母乳中のダイオキシン濃度を調べた結果、乳児が1日に摂取するダイオキシンは同省の基準(耐容摂取量)の6〜7倍とみられているが、同省は「母乳を飲むのは短期間のため、乳児に与える影響は直ちに問題になる程度ではない」という立場だ。
一方、ダイオキシン汚染問題に詳しい摂南大薬学部の宮田秀明教授は「大人を想定した耐容摂取量を乳児に当てはめられるのか証明されてはいない。今は母乳をやめろとも続けろとも言えない。世界中探しても答えが無い」と厚生省に疑問を投げ掛ける。
兵庫県尼崎市で育児相談室を開く助産婦の福井早智子さんは、全国約200人の助産婦に呼び掛けて母乳とミルクで育てたそれぞれ約100人の子供の健康状厚生省に本格的な調査をしてほしい」と訴えている。
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