「21世紀への環境課題 自治体の役割−環境監査」

増えるISO認証自治体



〜琉球新報1998/07/07夕刊〜

 深刻な公害の解決を国に迫り環境政策を変えてきたのは、公害の被害を受ける住民に一番近い立場にある地方自治体だった。ごみ焼却炉から出るダイオキシンなどの化学物質や自動車による汚染、地球温暖化など環境問題が深刻化する中で、地方分権の進展とともに自治体の果たす役割が一層大きくなっている。
 国際規格をとって環境自治体に―。1996年9月にスタートした企業向けの国際的な環境管理・監査の規格「国際標準化機構(ISO)14001」の認証を受ける自治体が増えてきた。゛経営感覚゛を取り入れながら行政を見直していこうという手法だ。
「『町の事務による環境負荷を減らす。職員の意識改革を進める。住民や町内にある企業にも環境保全を意識してもらう』のが目的。早くも効果が上がった」。
 1998年1月に国内の自治体で初めて認証を受けた千葉県白井町は利点を強調する。白井町の環境監査の仕組みは、町役場や幼稚園など対象となる行政の事業活動の範囲をまず定め、取り組み方針や「電気使用量の1%削減」「事務用紙の10%削減」など35五項目の目標とそれぞれの責任者を決める。進ちょく状況は第三者機関の財団法人「日本品質保証機構」が毎年監査し、問題があれば町が見直し、目標を再設定する。
「今のところ電気は月平均6%、紙も22%それぞれ削減している」。
行政は普段、具体的な目標にチャレンジすることが少ないだけに、職員の間にも張り合いが出てきたという。
 今年2月に認証を受けた新潟県上越市は、地元企業が認証を受ける際に費用の3分の1を補助し民間での取り組みを促進。神奈川県は4月から14001の認証を受けた事業所には、条例で定めた施設変更の届け出を免除するなど行政コストの削減も含め一石二鳥の効果を目指している。
 日本品質保証機構ISO推進本部の市川昌彦副本部長は「5月に開いたセミナーには180自治体が参加した。狙いは生き残りを模索する地場産業にノウハウを伝え活性化させることと行政改革の二つ。急激な変革でなく徐々に変えていくことが自治体には受け入れやすいのだろう」と分析する。
 上越、白井両市町以外に環境庁が把握しているだけでも現在、9自治体が認証取得を計画している。公認会計士でつくっている環境監査問題研究会の後藤敏彦代表幹事は、導入のメリットとして@管理システムを行政に取り入れることで自治体が経営感覚を身につけるA対策の状況や監査の過程、結果が情報公開制度を通じて入手できるので市民が行政をチェックしやすくなる―などを挙げ、環境改善の第一歩として評価できるとする。
 認証を受けるのは「首長の人気取りで政治的な目的のため」という批判もある。しかし、環境行政を改善することが市民の高い評価を受けると考え始めた自治体が増えてきたことは確かだ。

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