〜沖縄タイムス1998/12/08朝刊〜
残留性の高い有書物質として製造・使用が禁止され、内分泌かく乳化学物質(環境ホルモン)の疑いも指摘されているポリ塩化ビフェニール(PCB)が、微量ながら大気中から検出されたことが、環境庁が18日公表した1997年度の化学物質環境調査の結果で分かった。国内21の全調査地点から検出され、汚染は全国規模だった。
PCBによる水質や土壌、生物の汚染は知られているが、大気中で確認されたのは初めて。大気から入ったPCBの詳しい人体影響は未解明だが、PCBが水だけでなく、大気を通じて環境中に拡散している実態を示した。同庁は「直ちに人の健康などに影響が出るレベルではないが、今後も監視を継続したい」としている。
調査ではダイオキシン類汚染も依然広範囲で続いていることも判明した。
PCBについての調査は北海道、愛知、長崎など19道府県の県庁所在地などで自治体に依頼して21地点で実施。大気1立方メートル中の濃度は1.5ナノグラム(1ナノグラムは十億分の一グラム、長崎県庁地点)〜0.044ナノグラムだった。
PCBに大気の環境基準はないが、国が暫定的に設定している指針値の一立方メートル当たり500ナノグラムに比べ、今回の結果は低レベルだった。
ダイオキシン類は河川と湖沼、海域を対象に各21〜3地点で底の泥(底質)と魚類の濃度を調査したが、底質では昨年と同様、すべての地点から検出された。底質で最も濃度が高かったのは茨城県・霞ケ浦北浦で1グラム当たり50.68ピコグラム(1ピコグラム1兆分の1グラム)。沖縄県・中城湾は0.8111ピコグラム。魚類は静岡県・清水港が最高濃度で同2.7956ピコグラム。中城湾はゼロだった。
今回調査ではまた、塩化ビニールの原料で発がん性がある塩化ビニールモノマーも大気中や川、海などの水質や底質から検出された。大気の18調査地点のうち15地点で、同2000ナノグラム〜18ナノグラムの濃度で検出されたほか、水質が43地点中5地点、底質が40地点中3地点でそれぞれ検出された。
同庁は塩ビモノマー、ダイオキシン類ともに「現時点で影響が心配される数値ではない」としているがい今後塩ビモノマーについてもダイオキシンと同様、詳細な環境調査やリスク評価を進める方針だ。
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