〜沖縄タイムス1998/12/02夕刊〜
埼玉県狭山市は2日、焼却炉から排出されるダイオキシン濃度の目標値を盛り込んだ「ダイオキシン類の排出の抑制に関する条例」案を12月議会に提出する。同市によると、ダイオキシン抑制の条例制定は青森県黒石市、千葉県四街道市などに次いで全国5番目だが、具体的な数値を掲げたのは初めてという。
条例案は、既設炉について大気汚染防止法などの基準より厳しい目標値を設定。同法に基づく新設炉の基準と同様、民間の焼却炉は2002年12月以降、一時間当たり
の焼却能力が2トン未満は5ナノグラム(ナノは十億分の一)以下、2トン以上4トン未満は1ナノグラム以下、4トン以上は0.1ナノグラム以下とする。
市の二つの施設については、焼却能力2.1トンの焼却炉は1ナノグラム以下、2.3トンの焼却炉は0.5ナノグラム以下にするよう求めている。
狭山市には同法対象の民間焼却炉が十二施設ある。条例に罰則規定はなく、必要に応じて市が立ち入り調査亭指導、勧告をする。
条例案は今月17日の議会最終日に可決されれば来年4月から施行される。
全国の女性弁護士や研究者らが中心になって今年9月設立された「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」(代表・立川流高知大学長)は、ダイオキシン間題で国が当面取るべき対策の内容を「ダイオキシン緊急対策特別法」(仮称)として提言し、関係省庁や国会などに立法化を働き掛けていくことを決めた。
5日午後、東京都内でシンポジウムを開き、法案の中身について意見を交換。来年早々にも具体的な形にまとめ上げる方針だ。
同会議はこれまで、内部の委員会で法案に盛り込むべき内容を議論してきた。
それによると、厚生省、環境庁、通産省などによる縦割り行政の弊害をなくす組織として、首相を本部長とする「緊急対策本部」を設置する。また、調査で汚染の実態が分かってきた埼玉県所沢市周辺、大阪府能勢町といった一部市町村を地域指定し、原因となる焼却炉の稼働停止命令や、新規の焼却炉の立地制限ができるようにする。
調査研究面では、ダイオキシン濃度の測定地点の選定に住民参加を認めることや、かつて水田で使用された農薬の不純物が原因とみられるダイオキシン汚染を集中的に研究すことなどが、法案の柱となる。
国民会議は今回の提言を第一次と位置付けており、今後、環境基準の設定や発生源対策、総合的な廃棄物対策などを順次、新たな提言としてまとめることにしている。
シンポジウムは5日午後1時から東京都千代田区麹町5-1、弘済会館で。
問い合わせは:03(3432)1475、コスモス法律事務所
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