〜沖縄タイムス1998/08/16朝刊〜
中部北環境施設組合(管理者・知念恒男具志川市長)のごみ焼却施設・東西工場=石川市=から出る煤塵(ばいじん)や悪臭が日常生活を脅かすとして、地域住民が県の公害審査会へ訴える準備を進めている。住民らは四年ほど前から石川市や同組合に改善を求めているが、「一向に良くならず我慢できない。法的な強制力がある審査会で解決したい」と9月初めに申し立てる。受理されれば、ごみ問題では県内で初の審査ケース。昨年からごみ焼却場のダイオキシン排出が法規制されるなど関心が高まる中、今回の訴えは注目を集めそうだ。
東西工場は、主に石川市と恩納村のごみを扱い、一日平均約30トンのごみを焼却処理しているが、すでに15年の耐用年数をオーバー。小まめな修繕を繰り返しているが、老朽化が著しく焼却能力や集塵力が低下している。しかし、一昨年に全国一斉に実施されたダイオキシン調査では、一立方メートル中6.2二ナノグラム(一ナノは十億分の一)と、暫定基準値(80ナノグラム)を十分にクリアしているという。
住民によると、ごみを燃やす際に煙突から悪臭を伴う黒煙が排出され、周囲の家屋や畑に煤塵が降り「燃焼も不安定でダイオキシン発生の不安もある」と指摘している。再三、組合や行政に身体や農作物、家畜などへの悪影響を訴え改善を求めてきたが、「組合側は問題を放置している」として今回、公害審査会への申し立てを決めた。
現在、訴えを予定しているのは同市内在住の農家や畜産関係者など28人。15日、市内で開いた会議では焼却機器の入れ替えや操業停止を要求することや、さらに市民運動として広げるよう申立人を増やすことを決めた。
中心メンバーの鉄工所経営山城勉さん(57)は「公害を抑えるのは管理者の義務で、われわれは安全な生活を送りたいと訴えているだけ。早急に改善されるよう審査会でも十分に検討してほしい」と話した。
代理人を務める池宮城紀夫弁護士は、迅速な公害紛争を解決するために裁判ではなく、公害審査会を選んだと説明。「組合側も施設の欠陥を認めており、住民の被害を考えると緊急に解決を図る必要がある」と強調する。
また「今回の訴えで、多くの県民がごみ問題を真剣に考えるきっかけになるのではないか。住民もごみ分別を徹底し、ごみを出さないよう取り組まなければ本質的な解決にはならない」と指摘している。
公害審査会 公害紛争処理法に基づき、迅速で適切な紛争の解決を図るため各都道府県に設置されている審査機関。委員は弁護士や研究者などで構成する。あっせん、調停、仲裁の処理ができ、職権で資料収集や調査が行えるほか、仲裁判断などは裁判判決と同等の効力を持つ。県内での審査事例はこれまでに、沖縄市泡瀬地先の漁業被害賠償請求など3件。
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