〜沖縄タイムス1998/06/25夕刊・社会
生物や人の生殖に悪影響を及ぼすと指摘されている「内分泌かく乱化学物質」(環境ホルモン)など有害物質による海の汚染を広域的に突き止めるため、東南アジア各国沿岸に分布する貝類を使った国際共同調査がこの秋始まる。
田辺信介・愛媛大農学部教授(環境化学)を中心に、研究グループには環境庁や全国の大学から参加。調査対象国のインド、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、台湾の研究者も加わり、三年計画でアジアの広域汚染地図作成を目指す。
海洋汚染の監視には水を直接測定するのが理想だが、化学物質の濃度はごく低いため分析が難しく、特に途上国の汚染実態はほとんど解明されていない。
一方、貝類には環境ホルモンが高濃度で蓄積し、生殖異常などを起こすことが知られており、分析も比較的容易。このため、汚染を測る共通の指標として貝を選んだ。
研究グループは、熱帯・亜熱帯に分布するミドリイガイや、温帯のムラサキイガイといった二枚貝を各国沿岸の計50〜100地点で採取。船底塗料よく使われる有機スズ化合物のほか、有機塩素系殺虫剤・農薬、PCB(ポリ塩化ビフェニール)など環境ホルモンとみられる化学物質を中心に、約百種類について体内への濃縮状況や生殖への影響を明らかにする。
カキ類や魚類、渡り鳥も補足的に調べ、地域ごとの汚染源を探る。
環境ホルモンは、欧米で実態解明に向けた動きが始まっている。日本でも環境庁の研究班が、二十四日開かれた会議で野生生物など生態系への影響調査について議論した。こうした中で、貝を観測の指標として定着させられるか、成果が注目される。
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