「野鳥からダイオキシン」

ごみ焼却や農薬流入でえさの魚に



〜沖縄タイムス1998/06/01朝刊〜

 ごみ焼却などで発生し人体への影響が問題になっている猛毒物質ダイオキシンが、野鳥の体内にも高濃度で含まれていることが愛媛大の脇本忠明教授(57)らのグループの調査で分かり、6月4日から京都市で行われる「第7回環境科学討論会」で発表される。野鳥のダイオキシン汚染に関するデータは少なく、野生生物へのダイオキシン汚染を示す実例として注目されそうだ。

 調査は韓国の慶南大と共同で実施。1992年から1994年にかけて、韓国・洛東江河口付近でカモメやウミネコなどを捕獲、11種44羽の体脂肪などを分析した。
 その結果、すべての鳥からダイオキシン類が検出され、留鳥のウミネコ(10羽)は、最も毒性が高いダイオキシンに換算して1グラム当たり558.4〜12.9ピコグラム、平均131.7ピコグラムと最高値、平均値ともに11種中で最も高かった。渡り鳥のユリカモメ(7羽)は289〜28.3ピコグラムで、平均90.8ピコグラム。
 これらは致死量に達していないが、免疫系、内分泌に影響が出る可能性もあるという。
 調査で

    @留鳥の濃度が渡り鳥よりも高い
    A魚などを餌にする鳥の濃度が、低生生物を餌とする鳥よりも高い
などに傾向が明らかになった。
 脇本教授は、洛東江流域の工場のごみ焼却や、農業地域からの農薬流入などを原因とするダイオキシンが魚などにたまり、それらをえさとする鳥の体内に蓄積されたのではないかとみている。
 今秋には国内のトビやカラスを調査、今回のデータと比較する予定だ。
 脇本教授は「これほど高濃度のダイオキシンに野生生物が汚染されているということは、地球全体の生態系への影響が予測される」と指摘している。

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