〜沖縄タイムス1998/05/23朝刊〜
周辺土壌から高濃度のダイオキシンが検出された大阪府能勢町のごみ焼却施設「豊能郡美化センター」で、汚染土壌の除去問題が暗礁に乗り上げている。専門家らでつくる対策検討委員会は土壌入れ替えが望ましいとしたものの、環境先進国ドイツでも実践された例は見当たらず、具体策はめどが立っていない。全国の自治体が注目する中で、山あいの町の暗中模索が続いている。
施設周辺の土壌から1g当たり8,500ピコグラムというこれまでの数倍のダイオキシン検出が表面化したのは4月16日。
同センターを運営する豊能郡環境施設組合が設置していた対策検討委員会
(委員長、武田信生京都大大学院工学研究科教授)は4月17日、濃度が1g当たり1000ピコグラム以上の土壌について、地表から深さ10cm(斜面は20cm)まで土を入れ替えるなどの対策を取ることが望ましい、とした見解を発表した。
面積は約3万平方メートル。土の量は3000立方メートル以上に上り、5トントラック約1000台分にもなる計算だ。
検討委の対策の根拠となったのはドイツ連邦政府が1991年に打ち出した参考値。汚染レベルで対策は違うが、住宅地で濃度1000ピコグラム以上の場合は土壌の入れ替えなどが必要とされている。
しかし、環境庁によると「連邦政府や州政府に問い合わせているが実際に土壌を入れ替えたという例は聞いていない」(土壌農薬課)という。
同庁は今月中にも専門委員会を設け、ダイオキシンに汚染された土壌の安全対策に関する指針づくりに着手するが、いつ結論が出るか全くめどは立っていないのが実情だ。
土壌除去ができたとしても、土からダイオキシンを取り除く方法や受け入れ先はあるのか。検討委のメンバーの一人、浦辺真郎福岡大客員教授(衛生工学)は「既存のごみ焼却施設で土壌に含まれるダイオキシンを高温分解することは理論的には可能。しかしこれだけ大量の土壌をどこの施設が受け入れるのか。地元の反発もあるだろう」と疑問を示す。
組合は廃棄物の最終処分場「大阪湾広域臨海環境整備センター」(大阪府泉大津市、兵庫県尼崎市沖)に埋め立てる案も検討したが、同センターは「汚染土壌は受け入れ対象外。分解して無害化したとしてもあらためて審査しなければならない」(業務課)と話している。
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