「産廃焼却施設の3割休・廃止―規制強化受け
/排出量初推計、全国で年960グラム―厚生省調べ」




〜朝日新聞1999/04/06朝刊〜

 全国で5886の産業廃棄物焼却施設のうち、約3分の1の2046施設が、この1年間に休・廃止し ていたことが5日、厚生省の調査でわかった。廃棄物処理法の政省令改正を受けて昨年12月から厳しくなったダイオキシン類の排出基準に対応できないことなどが理由とみられる。また、稼働中の施設のうち、約2割が、義務づけられている排ガス中のダイオキシン類濃度の測定をしていなかった。厚生省はこれらの施設が維持管理基準に適合していないとみて、都道府県などに立ち入り検査や改善命令など必要な措置をとるよう指示した。

 厚生省は、昨年12月から排ガス中のダイオキシン類の排出基準を1立方メートル当たり80ナノグラム(1ナノは10億分の1)にして既設の焼却施設の規制を強化した。それを機に、都道府県や政令指定市を通じて施設が測定した排出濃度などを全国的に集計した。

 その結果、1998年12月01日までの1年間に、1393施設が廃止、653施設が休止していた。 廃止された施設の多くは事業所内の自己処理用の焼却施設という。

 施設改修が技術的に難しかったり、多額の費用がかかったりするために業者に委託して処理した方が安上がりと判断した事業所が多いとみられる。不法投棄が急増したという報告もないことから、焼いて自己処理されていた産廃はリサイクルや専門の処理業者に回されたりしているのではないか、と厚生省はみている。

 また、1997年12月1日からは排ガス中のダイオキシン類濃度を年に1回測定することが義務づけられたが、稼働中の施設のうち、687施設が昨年12月1日現在で測定していなかった。排出基準を超えた施設は19あり、基準の7倍にあたる560ナノグラムを排出し、その後も改善が見られないため、使用停止命令を出された施設もあった。

 測定した施設のダイオキシン類濃度は平均で排ガス1立方メートル当たり9ナノグラムだった。厚生省が各施設の排出濃度と焼却の処理量を掛け合わせて推計したところ、規制が強化された昨年12月までの産廃焼却施設からのダイオキシン類の排出量は全国で年間約960グラムだった。環境庁が大まかに推計した年間700グラムという数値があったが、実際の測定に基づく排出量は今回初めて、はじき出された。

 一般廃棄物の焼却施設からの排出量は1997年1月の調査をもとに推計されており、年間4320グラムだったことから、産廃施設についても調査を急ぐべきだと指摘されていた。今回の産廃調査と同時期に、一般廃棄物からの排出濃度を調べた結果、その排出量は1997年の約3割の1340グラムに削減されていた。

 ◆排出源責任も追及――不法投棄で警察庁通達  警察庁は、産業廃棄物の不法投棄やダイオキシン汚染の原因の一つといわれる野焼きなど、「環境犯罪」の取り締まり強化策を5日、全国の警察に通達した。

(1)産廃を不法投棄する末端業者だけでなく、排出源業者の責任を追及するための広域捜査体制の整備
(2)行政や業界と連携した早期原状回復の促進
(3)モニターの委嘱、ホームページの活用など情報窓口を設置する

―を挙げている。特に組織的・計画的なものや暴力団が関与するもの、行政指導を無視したものを重点的に取り締まるとしている。

 不法投棄は、委託から投棄までに複数の産廃処理業者が関与するケースが目立つ。関係者が広域にわたることから、排出業者の責任を廃棄物処理法の委託基準違反などで追及し、排出業者に、産廃撤去などの原状回復措置を取らせるよう努めるという。

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