〜朝日新聞1999/02/19朝刊〜
テレビ朝日が「埼玉県所沢産野菜はダイオキシン濃度が高い」とする民間研究所の調査を
報道し、ホウレンソウなどの価格が暴落した問題で、埼玉県は18日、研究所から受け取った
調査報告書を公表し、テレ朝が「野菜の濃度」の最高値として報じた3.8ピコグラム(ピコは1兆分の1)は、
せん茶1グラム中の濃度だったことを明らかにした。県はこの値が正確だとしても、
湯を注いでお茶にすればダイオキシンは最大で1.7%程度しか移らないとし、
「安全性に問題はない」と説明。テレ朝の報道を「大変遺憾」とした。
県独自で茶のダイオキシン調査をすることも決めた。
民間研究所の調査報告書では、ホウレンソウの最高値は0.75ピコグラムで、3.8ピコグラムは、所沢市内の製茶業者が提供したせん茶だった。同研究所は当初、「葉っぱものから検出した」
としていた。比較する茶の調査結果がほかに見つからなかったため、
県はこの値を前提に、ダイオキシン問題に詳しい宮田秀明・摂南大教授らの文献を参考にして、
農水、厚生、環境各省庁の協力も得て安全性を検討したという。
県によると、100キロの茶の生葉から製造されるせん茶は18キロ。せん茶で3.8ピコグラムだと、
生葉のダイオキシン濃度は0.7ピコグラム程度になると計算した。
ホウレンソウなどの野菜と比べ「特に高くない」という。
また、湯を注げば最大で1.7%程度しかお茶には移らないとし、
毎日5杯を粉まで飲み干したとしても、厚生省の1日耐容摂取量である体重1キロ当たり
10ピコグラムの0.2%にとどまると結論づけた。
抹茶や茶そばなどの食品は、茶の葉を直接摂取することになるが、
「魚などと比べると飛び抜けて高くない。毎日、茶そばばかり食べる人はいない」
とした。
ホウレンソウの暴落騒ぎが発生したときは反証するデータが不足していた反省から、
データを十分固めて公表に踏み切った。
県は今後、製造後のせん茶と、お湯を注いだお茶の両方のダイオキシン濃度をさらに詳しく
調査し、3月末の公表を目指す。
テレビ朝日の報道について、吉沢祥匡・県農林部長は「番組はあたかも葉野菜のように
報道したが、乾物のせん茶とは予想外だった。大変遺憾だ」と述べた。
|