「野菜暴落──ダイオキシン報道響く/所沢産、入荷中止相次ぐ」



〜朝日新聞1999/02/04朝刊〜

 「埼玉県所沢市の野菜はダイオキシン濃度が高い」と、1日夜、テレビ朝日系 「ニュースステーション」が報道したのをきっかけに、埼玉産や所沢産の野菜の 入荷を中止する動きが広がっている。入荷の中止に踏み切ったのは、3日現在で 少なくとも大手スーパー9社、約350店。青果市場では埼玉産の野菜の価格が 半値以下に暴落した。埼玉県は「所沢の大気中のダイオキシン濃度は高くない」 として、各市場に説明に回るという。

 ニュースステーションはハクサイに降りかかる焼却灰の映像を紹介、野菜の ダイオキシン濃度を調査したJA所沢市がデータを公表しないことなどを伝えた。 また、東京都内の民間研究所の調査として、同市内の野菜から1グラム当たり 0.64〜3.80ピコグラム(ピコは1兆分の1)のダイオキシンが検出され、厚生省の 全国調査(0.00〜0.43ピコグラム)を大きく上回る、と報じた。

 入荷をやめたのは、西友やマイカル、サミットなど9社で「テレビ報道を きっかけにやめた」としている。

 サミットは2日朝、全店にJA所沢市からの入荷を見合わせるように指示した。 東急ストアでは関東地区90店に指示を出し、3日から埼玉産から千葉、茨城産の 野菜に切り替えた。

 東京の野菜卸売業関係者によると、2日夜、スーパーなどからは、 「埼玉県産の野菜はいらない」と注文がすべてキャンセルになった。 小売店との取引でも、埼玉産の野菜は、品種を問わず半値以下に価格が暴落した。

 所沢市周辺には、産業廃棄物の焼却炉が集中し、ダイオキシン汚染の不安が 広がっている。JA所沢市は1997年、独自でホウレンソウなど5品目の調査を 実施した。しかし、「大騒ぎになれば責任をとれない」として公表していない。

 県の1997年の調査によると、所沢市の大気中のダイオキシン濃度は0.79ピコグラムで、 環境庁の指針値0.80ピコグラムを下回っている。県はこのデータを基に、 市場の混乱を抑えるとしている。

 テレビ朝日は「所沢市は野菜のダイオキシン濃度を調査せず、JAも情報を隠し、 農家も市民も不安に思っている。信頼できる分析をもとに問題を指摘する ねらいだった」としている。



◆県などは早く調査を──ダイオキシン問題に詳しい宮田秀明・摂南大学教授の話

 野菜には、土壌より大気経由で、ダイオキシンが入ってくるのは事実。 所沢市や埼玉県が早急に調査すべきだ。問題があれば出荷を停止させ、 補償すべきだろう。ダイオキシンの発生源抑制対策の遅れは、 地方行政の問題でもあり、生産者には汚染の責任はない。 補償してもらえるかどうか分からない以上、JAとしても自分たちの調査結果を 公表しにくいのではないか。


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