〜朝日新聞1999/01/06朝刊〜
発がん性のあるダイオキシン、ベンゼンなど大気汚染防止法で「指定物質」になっている4物質を排出している一定規模以上の工場・事業所に対し、環境庁は同法を改正し、都道府県への届け出と、排出の測定を義務づける方針を固めた。これまで排出基準が定められているだけで、どの事業所がどの程度の量を出しているかは不明だった。同庁は今月から関東・近畿圏の工場や事業所約6万社を調査し、実態を把握したうえで、2001年当初に改正法案の提出を目指す。
同庁が先月まとめた大気汚染調査結果によると、ベンゼンは千葉市、三重県四日市市、川崎市、大阪府堺市などのコンビナートや製鉄所の周辺で、環境基準の数倍もの高濃度の値が検出されるなど、全国53地点のうち26地点で基準を超過、ダイオキシンも68地点のうち14地点で基準を超えてい
た。このため同庁は、4物質を大気中に排出している一定規模以上の工場や事業所に、都道府県への届け出と煙突からの濃度の測定を義務づけることにした。
これらの規制強化で、自治体は事業所を指導し、大幅な削減を図れるとしている。数万社が対象となりそうだ。また、自治体に立ち入り調査権を持たせ、指導に従わない事業所には罰則をかけることも検討したいとしている。
今月から3月にかけて、ダイオキシンを除く3物質を排出していると見られる関東と関西の事業所6万社を対象に調査し、どのような業種でどの程度、これらの物質を使っているかを把握する方針だ。
大気汚染防止法は、これまで窒素酸化物、硫黄酸化物や鉛、カドミウムなどの重金属を「有害物質」と指定。一定規模以上の工場・事業所に対し、都道府県への届け出と測定を義務づけてきた。
その後、発がん性の指摘される有機塩素系化合物の対策が課題となり、1997年に大防法を改正した。ベンゼン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンの3物質を「指定物質」に指定、その後、ダイオキシンも追加指定し、一定規模以上の工場・事業所について「抑制基準」を設定した。
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