「産廃排煙、送電線切る─塩化水素で腐食/8月の事故東電が発表」



〜朝日新聞1998/12/26朝刊〜

 静岡県下田市で今年8月、6万ボルトの送電線が切れ、同県南伊豆町一帯約1万戸が停電した事故で、東京電力沼津支店は25日、送電線の真下にある産業廃棄物処理施設の焼却炉から出た、排煙に含まれる塩化水素によって送電線が腐食し、断線したと発表した。同社によると、焼却炉の排煙が原因となった送電線の断線は前例がないという。

 切れた送電線は直径18.2ミリ。7本の鋼線の周りを30本のアルミ線で巻いてある。

 東電が社団法人腐食防食協会(東京)に委託した調査結果によると、アルミ線に付着した塩化水素が雨水などに溶けて塩酸となってアルミ線を腐食させ、本来はアルミ線を流れるべき電流が、電気抵抗の高い鋼線に流れた。さらに鋼線やアルミ線のすき間に発生した水酸化アルミが熱発散を妨げたことから、鋼線が 500度以上の高温になり、断線したとしている。

 この産廃処理施設の焼却炉の煙突の先端と送電線との間は約30メートル。東電では、腐食が酸性雨などとは比較にならないほど激しく、発生源がほかに考えられないことなどから、この焼却炉からの排出物質が送電線切断の原因と断定した。

 この施設は7年前から操業し、廃プラスチックなどを焼却している。昨年11月に実施した自主検査で、塩化水素の測定値が、国の基準値の約2倍にあたる1立方メートル当たり1400ミリグラムを示した。このため県は改善を指導した。

 産廃処理業者は「(東電の調査結果は)まだ聞いていないのでコメントできない。塩化水素はダイオキシン対策と並行して改善している」と話し、煙突にフィルターを取り付けるという。

 東電によると、管内には送電線から 100メートル以内にある産廃処理施設が、ほかに35カ所あるが、事故後の点検で、異常は見つからなかったという。

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