〜朝日新聞1998/12/02朝刊〜
母親の体に入った内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が速やかに胎児へ広がっていくことを、横浜市立大の井口泰泉教授(内分泌学)らが突き止め、4日に東京で開かれる日本医学会のシンポジウムで報告する。環境ホルモンの疑いがある物質を妊娠中のマウスに注射したところ、3時間で胎児の血液や肝臓内の濃度が母親と同レベルになった。赤ちゃんの健康に具体的な影響が出ないか、さらに調べることにしている。
環境ホルモンは胎児への悪影響が最も危ぐされている。ただ、ダイオキシンやPCBなど蓄積性の強い一部の物質を除き、多くの物質は体内から排出されやすく、妊娠中に母体へ入っても胎児へは広がりにくいと考えられていた。
井口教授らは、ポリカーボネート樹脂などの原料で、環境ホルモンの疑いが持たれているビスフェノールAを妊娠中のマウスへ注射し、母親と胎児の血液や肝臓などのビスフェノールA濃度を調べてみた。分析しやすくするため、注射量は体重25グラム当たり2.5ミリグラムと大量にした。
母親の血液中の濃度が注射後6時間で1グラム当たり0.0マイクログラムで最大になったのに対し、胎児では早くも3時間後に同1.4マイクログラムで最大になった。肝臓の場合、母親は6時間後に1グラム当たり25マイクログラムで、胎児は3時間後に同20マイクログラムで、それぞれ最大になっていた。
一方、胎盤内の濃度は3時間後に1グラム当たり0.6マイクログラムに急増。24時間たっても同0.8マイクログラムのままだったという。
|