〜朝日新聞1998/11/28朝刊〜
人の卵巣がダイオキシン類に汚染されていることを、東京大と国立環境研究所のチームが突きとめ、12月4日、東京で開かれる日本医学会主催の内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)のシンポジウムで発表する。生殖器官の汚染が明らかになったのは初めて。検出されたのは今のところごく微量だが、ダイオキシン類は、環境ホルモンとして働いて卵子の質を変え、受精卵の発達に影響を与える恐れがあるため、専門家は警戒を強めている。
ダイオキシン類の汚染は血液や母乳ではすでに明らかになっているが、卵巣や精巣など生殖器官のデータはほとんどない。東大医学部の堤治・助教授(産婦人科)たちは、体外受精で卵子を採るときに得られる卵胞液に、ダイオキシン類のポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)がどれだけ含まれるかを見た。
これまでに調べた6人では、これらのダイオキシン類が卵胞液1ml当たり平均1.1ピコグラム(ピコは1兆分の1)検出された。最も毒性が強いダイオキシンに換算した量(TEQ)は、卵胞液1ml当たり0.011ピコグラムになった。
世界保健機関(WHO)が定めるダイオキシン類の耐容一日摂取量(一生とり続けても健康に悪影響がないとされる量)は、体重1kg当たりTEQで1〜4ピコグラム。10月末の厚生省の発表では、日本人は一日に体重1kg当たり2.41ピコグラムを食品からとっている。
ダイオキシンの卵細胞や精子への影響は詳しくはわかっていないが、動物実験では、母体の汚染で流産したり、子に奇形や生殖機能の異常が現れたりすることがわかっている。
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