〜朝日新聞1998/10/29朝刊〜
地方公共団体が発注するごみ焼却施設の建設をめぐりプラントメーカーが談合を繰り返していたとして公正取引委員会の立ち入り検査を受けた問題で、各社の担当者が集まって開いていた談合とみられる会合の詳細が業界の内部資料などで明らかになった。会合は、大手5社が中心となって、1980年から18年間、全国で発注される大型焼却炉「全連続燃焼式ストーカー炉」を対象に継続。過去の実績に基づいたシェアを各社に振り分けたうえで本命業者を決めていたとされる。公取委の事情聴取に対して、各社の担当者は談合の事実を一部、認め始めているという。公取委は重大な独占禁止法違反事件との見方を強め、刑事告発の可能性も視野に入れて審査を進めている。
談合の疑いがもたれているのは、大手5社の日立造船(本社・大阪市)、三菱重工業(同・東京都)、タクマ(同・兵庫県尼崎市)、NKK(同・東京都)、川崎重工業(同・神戸市)。公取委は9月17日から、5社を含む十数社に対し、独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査をした。
5社は1975年前後から、「五社会」や、荏原(本社・東京都)とクボタ(同・大阪市)を加えた7社の「七社会」などと呼ばれる組織で、談合とみられる会合を開いていた。大手5社を含めた7社に対しては、1978年に公取委が独禁法違反の疑いで立ち入り検査をし、1979年に文書で警告したことがある。
内部資料などによると、この会合は80年から大手5社を中心に再び開かれ、そのまま慣行のように繰り返されていたとみられる。
受注予定者を決める方法は、まず過去の実績に応じて各社の年間受注トン数の割合(シェア)を決める。次に、そのシェアを、全国の自治体が翌年に発注する予定の工事計画に当てはめ、各社の年間受注トン数をはじき出す。各社は割り当てられたトン数に応じて希望する工事を指名し、工事ごとの受注予定者を決めていたという。さらに個々の工事の入札前に入札価格を相談していた疑いも持たれている。
朝日新聞社の調べによると、全連続燃焼式ストーカー炉の建設工事の契約金額は昨年度で約2100億円。1980年度から昨年度までの受注実績のうち5社が89.4%、7社が95.8%と大半を占めている。
ごみ焼却施設について厚生省は昨年、ダイオキシン削減のために排出基準を定め、既設炉の改造や処理能力の大きい全連続炉への集約化を推進している。しかし、景気対策のための大型補正予算が組まれた1995年度までに比べ、1996年度からは補助金の額が急減しており、受注競争が厳しくなっていた。
この問題についてプラントメーカー各社は「今の時点ではコメントできない」(日立造船総務部)、「公取委の判断が出ていない段階では何も言えない」(三菱重工業総務広報部)、「そういうことはない、という認識を持っている」(タクマ企画部)、「今、審査を受けている段階なのでコメントできない」(NKK広報企画室)、「結論が出るまでは何も言えない」(川崎重工業広報室)などとしている。
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