〜朝日新聞1998/10/06朝刊〜
母乳中の濃度が注目され、赤ちゃんへの影響が心配されているダイオキシン類について、母親の体内にいるときは、へその緒を通して、ダイオキシン類は赤ちゃんに移行しているものの、その量はごく微量であることが、厚生省の調査で8日明らかになった。妊娠初期はさまざまな毒素による化学障害を受ける危険があるといわれており、厚生省は、赤ちゃんは母胎の中で守られていることを示すデータとして注目している。
調査したのは、厚生省の「さい帯血等のダイオキシン類に関する研究班」。東京都内の病院で、20人の妊産婦に協力してもらい、胎盤、さい帯血、出産後5日目の母乳のダイオキシン類の濃度を測定した。
ダイオキシン類の平均濃度は1グラム当たりで、胎盤が0.44ピコグラム(1ピコは1兆分の1)、母乳が0.46ピコグラムに対して、さい帯血は0.0092ピコグラムと低かった。過去の研究で出ている大人の血液中のダイオキシン類の濃度に比べても、さい帯血中の濃度は7分の1程度だった。
研究班メンバーの東邦大学医学部の多田裕教授は「胎盤の何らかの働きによって、濃度が低くなっている可能性を示唆するものだ」とした上で、「しかし、脂肪1グラム当たりのデータがないので、さらに慎重に検討する必要がある」と話している。
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