〜朝日新聞1998/08/01朝刊〜
ダイオキシンの免疫毒性の検査に人の白血病細胞を用いる新たなシステムを、東北大学加齢医学研究所(仙台市)の菊池英明・助教授が開発した。
マウスの胸せん細胞を使う従来の実験方法に比べ、人間への毒性を直接判断できるうえ、手間も大幅に省けるという。この方法によって、これまで考えられていた以外にダイオキシンと結合して免疫機能低下を招く物質が人体内にあることがわかった。
研究成果は、7月31日発行の米国の生物科学者向けの専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に掲載された。
ダイオキシンについては、よく知られている発がん性や生殖毒性のほか、免疫にも害を及ぼすことが分かっている。
体内に入ったダイオキシンは、「Ah受容体」と呼ばれるたんぱく質と結合。胸せんで成熟して免疫に大きな役割を持つ「T細胞」を自滅させ、ウイルスや細菌などの感染を防ぐ免疫機能を低下させる、と考えられている。
菊池助教授は、T細胞の成熟過程でダイオキシンへの感受性が強まる段階がある、と推定。T細胞が、がん化して白血病細胞になった例の中から、ダイオキシンへの感受性が強い細胞を見つけ出して増殖することで、実験対象のT細胞を確保することに成功した。
これまでの方法では1匹のマウスから多くて100mg程度しか取り出せなかった実験材料を、新方法だと試験管の中で増殖できる。このため、1回で3、4日かかった実験が1日ほどに短縮できるうえ、実験に必要なT細胞も、理論上は無限に供給できる。
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