「ばいじんにダイオキシン2.5キロ−環境庁調査」



〜朝日新聞1998/07/17朝刊〜

 ごみ焼却施設や工場などから排出されるばいじんに含まれるダイオキシンが全国で年間2.5キロにのぼることが環境庁が行った調査でわかった。同庁は大気に排出されるダイオキシン量を年間約5.3キロと推定しており、その 半分がばいじんと一緒に落下したことになる。ディーゼルトラックの排ガスから見つかったり、医療系の産廃小型ごみ焼却施設から高濃度で検出されたりした。同庁は今春、ダイオキシンを削減するために焼却施設についてばいじん規制を強化したが、全国に約9万基ある小型焼却施設は規制の対象外となっており、新たな対策が求められそうだ。

 環境庁は昨年度、大気中や河川・海の濃度や、焼却施設などからの排出濃度を調べた。札幌、東京、名古屋、大阪、福岡など10地点で1カ月間ばいじん中のダイオキシン濃度を調べたところ、川崎市と東京都新宿区が1平方キ ロメートル当たり2.4ミリグラムと最も高く、大阪市が同1.1ミリグラム、名古屋市と福岡県大牟田市が同0.9ミリグラムなどだった。平均値をだし、全国のダイオキシン量に換算したところ、2.5キログラムとなった。

 また、コプラナーPCBを調べたところ、各測定値でダイオキシンの約10分の1になった。同庁は、コプラナーPCBをダイオキシン類に入れ、大気汚染防止法の指定物質として規制する方針だ。

 大型のディーゼルトラック(車両総重量19トン)の排ガスに含まれる濃度は、1立方メートル中最大で3ピコグラム(1ピコは1兆分の1)、平均値で2.6ピコ。軽油の中に何らかの不純物が混じっているのではないかとしているが、道路沿線の濃度はそれ以外の地域と比べて高く、ディーゼル車が要因の一つではないかと、同庁は見ている。

 小型焼却炉のうち、病院など医療系の焼却施設からは、600ナノグラム(1ナノは10億分の1)の高い値が検出された。一般焼却施設で緊急対策が求められている80ナノの7倍以上になる。透析用の塩化ビニルが多いことや 不完全燃焼で濃度が高く、ばいじん量が多くなったという。

 また、川と海では、信濃川河口近くが1リットル中、3.9ピコグラムと高かった。他の地点では東京湾が同0.18ピコ、有明海が同0.048ピコ、大阪湾が0.007ピコ、名古屋港が0.009ピコなど。信濃川が高かったのは浮遊物質が多く、底泥に堆積していたダイオキシンが巻き上げられ、浮遊物質についたのではないかと見られる。

 大気汚染に詳しい民間調査機関の青山貞一環境総合研究所所長の話

 焼却炉の規制はまだ甘く、大型炉に対しては猶予期間を短縮し、医療用など小型炉は濃度規制や使用禁止を考えるべきだ。また、車1台から出る量は少なくてもまとまるとかなりの量になるのではないか。特に沿道が高いのが心配で、今後きちんとした調査が必要だ。

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