〜朝日新聞1998/05/28朝刊〜
厚生省の「内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の健康影響に関する検討会」が二十七日開かれ、20代の若者の精子が減っているとする調査結果が報告された。同時に、妊娠した女性のパートナーを対象にした別の調査では年代別には大きな変化はなかったとする中間報告も公表された。検討会は国際比較なども含めて、今後も調査を継続する。
検討会委員で帝京大医学部泌尿器科の押尾茂講師は1996年4月から今年3月までの2年間、20歳から53歳の健康な男性94人の精液を調べた。
20代50人の若者群と、30代以上44人の中年群を比べたところ、1ミリリットルあたりの精子濃度(世界保健機関=WHO=の基準で2000万個以上が正常)は前者が4580万個で、後者の7800万個を大幅に下回った。精子が活発に動いている割合を示す運動率はともに30%を割っていた。精液量や精子濃度などでWHOの定める基準をすべて満たしたのは若者群では2人(4%)、中年群では4人(9%)だった。
一方、妊娠した女性をパートナーにもつ男性を対象にした調査結果は、聖マリアンナ医科大泌尿器科の岩本晃明教授が報告した。
1997年11月から20歳から44歳までの男性100人の精液を検査したところ、20代、30代、40代の濃度は、それぞれ7050万個、8860万個、7230万個だった。運動率はいずれも50%前後。岩本教授は「WHOの基準を下回っているからといって子どもができないということではない。いまの段階では環境ホルモンとの関係は何ともいえない」としている。
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